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技法についての連載(2)「混合技法」

 大学院で混合技法の研究とそれを用いた制作活動を行った。

(1)基底材

      混合技法は絵をそうで考えた場合、下の層ほど脂気が少なくなる。このことはとても重要で、逆だと壁のペンキがはがれるように、ペロンと絵の具が剥がれてしまう。油性のペンが何にでもはじかずに書けるのは油が強いからだ。反対に、鉄筋コンクリートの壁のペンキが剥がれている場合、油性のペンキの上に水性のペンキで塗ったからという場合が多い。なので、混合技法の基底材は水性である必要がある。つまり、麻布のキャンバスを、膠で目止めをして、その上に脂気のない膠を用いた白(ジェッソ)を用いる。

(2)下描きからインプリマトゥーラ

      木炭や鉛筆などで下がきをし、炭や水彩絵の具でなぞったり、暗部を薄く塗ったりして調子を作る。その上に油彩でインプリマトゥーラを施す。インプリマトゥーラとは、画面全体をテレピンなどの揮発油でかなり薄めた画溶液に少しの油絵の具(何色でもよい)とほんの少しのホワイトを混ぜて溶き、ほんのり色が全体につく感じで、着色をすることである。

(3)テンペラ白と混合白

      その上からテンペラの白か混合白を用いて明るいところをかき起こしていく。

      テンペラ白も混合白もテンペラメディウムを使って作る。テンペラメディウムは鶏卵1個とその半分のスタンドオイル、同量のダンマルニスで作る。

      まず、ダンマルニスをつくる。画材店などで固形のダンマル樹脂を手に入れる。それを広口瓶にnグラム入れて2nミリリットルのテレピンで浸し、一日に2回くらいの割合で上下をひっくり返しながら振って、溶かしていく。1週間ほどすると樹脂が完全に溶けるので、不純物を取り除くために上澄みを別便に移す。新聞広告などを追って漏斗を作り、ティッシュペーパーなどフィルターにするとよい。

      テンペラメディウムのつくりかたは、広口のジャムの空き瓶などを熱湯消毒して鶏卵1個を割って入れる。黄身についているカラザを取り除き、ふたをしてよく振る。均一に白身と黄身が混ざったら、分量のスタンドオイルとダンマルニスを入れてさらによく振る。マヨネーズ用のものができるが、成分的にも似ている。マヨネーズは卵と酢と油、テンペラメディウムは卵と樹脂と油、どちらもエマルジョンである。エマルジョンとは油性の粒が水性の溶液の中で細かな粒となって存在している状態を指す。水にも油にも溶けやすい。冷蔵庫で保存すると2週間くらいはもつ。

      このテンペラメディウムをスプーン1杯とって皿に出し、同量の水で薄め、ジンクホワイトかチタニウムホワイトの顔料を加えて練るとテンペラ白の絵の具ができる。ジンクホワイトの原料は亜鉛で透明度が高い。チタニウムホワイトの原料は文字通りチタニウムで隠蔽力が強い。どちらも毒性がないので安心だ。シルバーホワイトの顔料は、鉛が原料なので吸い込むと危険なので顔料の状態では扱わない方がよい。

      テンペラ白の絵の具もメディウム同様長くはもたない。この絵の具は水で薄めることができ、主にハッチングで明るいところをかき起こすのに使う。油絵の具の上に書くことができる。油性面の上に水性絵の具を置くので、線がはじかれ気味になりきゅっと細くなる。細密に書くにはとても便利だ。油性の絵の具では、粘性が強いので、ここまで細密に描けない。

      テンペラメディウムを水で薄めずに、そのままジンクホワイトかチタニウムホワイトの顔料を加えて練って絵の具にして、そこにファンデーションホワイトかシルバーホワイトを加えたものが混合白だ。マチエールを作るのに使う。油分が少ないので乾燥も早い。前述の「下の層ほど油は少なく、上の層ほど油は多く」の法則にも合致する。この絵の具は固着力も強く、柔軟性もあるのでキャンバスを巻いても剥がれにくい。



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